本コンテンツの理論的背景

なぜ子ども期の運動経験が重要なのか

運動神経は、生まれつきの才能だけで決まるものではありません。
「これまでにどれだけ多様な動きを経験してきたか」という環境要因が大きく関わります。

人間の発育発達を示したスキャモンの発育発達曲線によると、
神経系は5歳頃までに約80%、12歳頃までに大部分が形づくられるとされています。

これはつまり、
脳と体をつなぐ回路の“ベース”が子どものうちに作られるということです。

この時期は、新しい動きや感覚をどんどん吸収できる
いわば「ゴールデンタイム」。

この時期に多様な動きを経験することで、
脳と体をつなぐ神経回路がぐんぐんと育っていきます。

そして、
その回路が増えることで、
体の使い方のバリエーションや調整力が高まり、
新しい動きも身につけやすくなります。

一方で、この時期を過ぎてからは、
同じことを身につけるにも
より多くの時間や繰り返しが必要になります。

つまり、
12歳頃までが最も運動神経が伸びやすい時期であり、
この時期の経験が、その後の動きやすさを大きく左右します。


プレゴールデンエイジとゴールデンエイジ

この、運動神経が伸びやすい12歳頃までの時期は、
さらに2つに分けて考えることができます。

▶ プレゴールデンエイジ(3〜8歳)

からだを動かす楽しさを知り、
動きの“土台”を築く時期です。

走る・跳ぶ・支える・回るなど、
多種多様な「基本動作」を遊びの中で経験することが大切です。

この時期の豊かな運動経験が、
ゴールデンエイジ期の動きの習得のしやすさにつながります。


▶ ゴールデンエイジ(9〜12歳)

神経系の発達が進み、
動きやスキルを効率よく習得できる時期です。

見た動きを真似る力や、
複雑な動きを調整する力も大きく伸びていきます。

そのため、
高度な動きやスポーツスキルも
身につきやすくなります。

しかし——
この伸びを活かせるかどうかは、
プレゴールデンエイジ期に築いた「土台」に大きく左右されます。


36の基本動作とは

本コンテンツの土台となっているのが、
中村和彦先生が提唱する「36の基本動作」です。

これは、

・日常生活で使う動き
・体育やスポーツにつながる動き

を体系的に整理したものです。

「立つ」「歩く」だけでなく、
「回る」「渡る」「はう」「打つ」「蹴る」など、
単一スポーツだけでは十分に経験しにくい動きも含まれています。

現代は外遊びの機会が大きく減り、スクリーンタイムが増えています。

その結果、気づかないうちに動きの経験が減り、
日常生活の中だけでは、基本動作を十分に身につけにくくなっています。

そして、動きがぎこちない子どもの多くは、
決して能力が低いのではなく、
必要な動きをまだ十分に経験していない状態にあります。

だからこそ—
36の基本動作をまんべんなく経験できる環境を、
意識的につくることが重要です。

コーディネーション能力とは

「運動神経が良い」とは、
筋力が強いことや柔軟性が高いこととは少し違います。

感覚器官からの情報を脳が受け取り、
状況に応じて体をコントロールする力。

この“神経系による調整力”こそが、
いわゆる「運動神経」の本質です。

この力は「コーディネーション能力」と呼ばれ、
次の7つの要素に分けられます。

  1. 定位能力(位置関係を把握する力)
  2. 変換能力(動きを素早く切り替える力)
  3. 連結能力(動きをなめらかにつなぐ力)
  4. 反応能力(素早く反応する力)
  5. 識別能力(力加減を調整する力)
  6. リズム能力(タイミングを合わせる力)
  7. バランス能力(姿勢を保ち、立て直す力)

このコーディネーション能力は、
特別なトレーニングだけでなく、
「さまざまな動き」を経験する中で
神経回路が刺激され、自然と育っていきます。


36の基本動作とコーディネーション能力の関係

36の基本動作は、
いわば「動きの素材」です。

それらを遊びの中で組み合わせ、
何度も経験することで、
体をうまくコントロールする力が育っていきます。

36の動作を多く経験するほど、
使える“引き出し”が増えていきます。

そして—
その引き出しを、状況に応じて
適切に使いこなす力こそが、
コーディネーション能力です。


なぜ「遊び」なのか

36の基本動作は、
ひとつずつ練習して覚えるものではありません。

子どもが夢中になる遊びの中では、
36の基本動作が自然に組み合わさり、
さまざまな動きが同時に引き出されます。

その中で神経回路が刺激され、
動きをつなぎ、調整する力—
つまりコーディネーション能力が育っていきます。

遊びは、子どもにとって単なる娯楽ではありません。

楽しみながら多様な動きを経験することが、
36の基本動作を身につけながら、
コーディネーション能力も同時に育てていく—
本来の発達のかたちなのです。


本コンテンツの設計思想

これまでお伝えしてきたように、

運動神経は、
神経系の発達が著しい時期に、
どれだけ多様な動きを経験してきたかによって育まれます。

本コンテンツは、

・神経系の発達が著しい時期に
・多様な基本動作を経験し
・コーディネーション能力を育てる

ことを目的に設計しています。

特定の動きの正解を教えるのではなく、
遊びの中で多様な動きを引き出す。

日々のおうちでの運動あそびの積み重ねが、
お子さんの運動神経を着実に育てていきます。